ナカイケイラ氏の個展を観て気付いた
2020年9月11日~15日
東京都中央区京橋1丁目 JR東京駅から歩いて10分ぐらいの小さなギャラリー
「メゾンドネコ」にて開催
ナカイケイラ氏の個展『スフィンクスの舞踏会』を拝見して参りました。
スマホを持った八咫烏、蓮の柄の豹、軍服を着たケンタウロスなどなど、
絵も魅力的ながら、ナカイケイラ氏ご自身も気さくで楽しい方。
日曜日のほんの一時間でしたが、大変楽しいひとときを過ごさせていただきました。
【ある絵の解説】
ストーリーは意外と大事
戦闘機の擬人化でしょうか。第二次世界大戦で使用されたと思しき戦闘機から、人間の上半身が生え、その身体は狙撃されたために穴だらけ、頭には包帯が巻かれ血がにじんでいるという、何とも悲惨な絵です。
ナカイケイラ氏がすかさず解説してくれました。これはイギリスの戦闘機…として生まれたものなのですが、一度も戦場に出ることはなく、仲間であるイギリスの戦闘機によって練習台にされ、穴だらけになった。そういう悲しい戦闘機がモデルだそうです。
なるほど、そう言われてもう一度同じ絵を見ると、不満そうな擬人化戦闘機の表情も、あまりに酷い怪我の理由も、よく分かります。
二度目に見ると、悲惨というより愛しささえ感じてしまいましたが、それは決して気のせいではないでしょう。
【A君の絵のこと】
彼の絵に欠けているもの
擬人化ではないが、上記の絵を見てすぐに思い出したのは、友人の漫画家N氏の息子さん、A君の絵です。
A君は非常に絵が達者で、女の子の姿をしたアンドロイドの絵を得意としています。
が、彼の描く女の子はどれもこれも、いつも負傷していて、キツイ眼差しでコチラを見ていたり、不満げな顔でつんと口をとがらせていたりします。
いつ見ても絵が上手だし、女の子の表情や身体の線が巧みに描かれているのでファンも多く、同人誌即売会などで画集もよく売れています。
でも、彼の絵には何かが足りない。魅力的だし、世界観もしっかりあるようだから、ファンになる人が多いのもよく分かります。でも、オバサンは、ちょっと「何かが足りない」と思ってしまうのです。
【AKさんの絵のこと】
彼女の絵が魅力的な理由
翻って、A君と真逆の、趣味で漫画を量産しているAKさんのことも思い出しました。
AKさんは、失礼を承知で言わせてもらいますと、沢山描いているけれど、なかなか上手くならない。
同人誌即売会に出ても、彼女の本は売れたり売れなかったりといった感じだろうと推察します。
私の見た限りでは、3歩離れて見ると、表紙絵は非常にステキです。しかし細部がよく見えるほど近づくと、人間の描き方がアイコン的で、動物の骨格が描けてないなど、粗が目立つので、かなり残念です。
ただ、AKさんの表紙絵はカラーがキレイで、構図がドラマチックなので、(漫画のストーリーも面白いこともあります)たまに気に入った本は買うこともあります。
【何度でも使われる絵と一瞬で消える絵】
A君のママの絵とA君の絵の違い
さて先に述べたA君のママ、漫画家のNさん。
Nさんの絵は、ある特殊な分野ではわりと有名なので、お役所から頼まれて冊子に使われたり、地元の英雄に関するイベントでポスターに使われたりするようです。
Nさんご自身も、その地元の英雄についてはかなり昔から研究しているので、その英雄と御家来衆に関する漫画をよくツイッターなどで発信しています。
Nさんの描いた本の裏表紙に、息子さんのA君が描いた可愛い少女の絵が載っていたことがありました。その絵が可愛いのでその本を買いましたが、上手い絵なのだけど、5分以上見ると飽きる絵です。それに引き換え、Nさんの描いた地元の英雄の絵は、何度見ても、何度使われても見飽きない。
【まとめ】
ストーリーがあると厚みが違うよね、という話。
絵の上手いA君と、彼のママである漫画家Nさんの絵は何が違うのか。
絵の上手くないAKさんの絵は、何故ドラマチックで魅力的に見えるのか。
私は、ナカイケイラ氏から、負傷した飛行機(の擬人化)の絵にまつわる物語を聞いて、凄く腑に落ちるものがありました。
物語がある絵は、絵の巧拙を別にして、ひときわ魅力的に感じられるものなのです。
話を知らなくても、ナカイケイラ氏の絵は美しく説得力がありますが、お話を聞くと一層絵に入り込むことができ、絵に親しみが増します。
AKさんの絵は、デッサン力不足?などが災いして、上手いと思われる絵にはなかなか出会えません。しかしAKさんの絵は、先に漫画のストーリーがあって、その内容を伝えるために描かれているものなので、「ドラマを語ろう」、「カラーでイメージを伝えよう」とする彼女の情念のお陰で、非常に輝くのです。というか見る側に訴えるものがあり、パワーが感じられるのです。
漫画家Nさんの絵と息子さんのA君の絵を上手い下手で比べるなら、A君の方が上手いかな、と思うこともあります。
けれども、A君の絵を見て、5分で見飽きるのは、内容がないからでしょう。
Nさんの絵は、彼女の半生以上をかけて調べつくした英雄の生涯を知った上での絵ですから、何も描かれていないようでも、人物の表情や、甲冑の紐や手袋の柄など、構図やディテールから強力に訴えかける何かがあるのだと思います。
漫画絵とは案外怖いもので、何も知らずに描いているのと、思いを込めて描かれたものは、たとえ線一本でも違ってきます。
漫画…イラスト絵一枚といえども、その背景にあるストーリーがしっかりある物は、ストーリーの厚みの分だけ見る者に伝わるものがあるような気がいたします。
東京都中央区京橋1丁目 JR東京駅から歩いて10分ぐらいの小さなギャラリー
「メゾンドネコ」にて開催
ナカイケイラ氏の個展『スフィンクスの舞踏会』を拝見して参りました。
スマホを持った八咫烏、蓮の柄の豹、軍服を着たケンタウロスなどなど、
絵も魅力的ながら、ナカイケイラ氏ご自身も気さくで楽しい方。
日曜日のほんの一時間でしたが、大変楽しいひとときを過ごさせていただきました。
【ある絵の解説】
ストーリーは意外と大事
戦闘機の擬人化でしょうか。第二次世界大戦で使用されたと思しき戦闘機から、人間の上半身が生え、その身体は狙撃されたために穴だらけ、頭には包帯が巻かれ血がにじんでいるという、何とも悲惨な絵です。
ナカイケイラ氏がすかさず解説してくれました。これはイギリスの戦闘機…として生まれたものなのですが、一度も戦場に出ることはなく、仲間であるイギリスの戦闘機によって練習台にされ、穴だらけになった。そういう悲しい戦闘機がモデルだそうです。
なるほど、そう言われてもう一度同じ絵を見ると、不満そうな擬人化戦闘機の表情も、あまりに酷い怪我の理由も、よく分かります。
二度目に見ると、悲惨というより愛しささえ感じてしまいましたが、それは決して気のせいではないでしょう。
【A君の絵のこと】
彼の絵に欠けているもの
擬人化ではないが、上記の絵を見てすぐに思い出したのは、友人の漫画家N氏の息子さん、A君の絵です。
A君は非常に絵が達者で、女の子の姿をしたアンドロイドの絵を得意としています。
が、彼の描く女の子はどれもこれも、いつも負傷していて、キツイ眼差しでコチラを見ていたり、不満げな顔でつんと口をとがらせていたりします。
いつ見ても絵が上手だし、女の子の表情や身体の線が巧みに描かれているのでファンも多く、同人誌即売会などで画集もよく売れています。
でも、彼の絵には何かが足りない。魅力的だし、世界観もしっかりあるようだから、ファンになる人が多いのもよく分かります。でも、オバサンは、ちょっと「何かが足りない」と思ってしまうのです。
【AKさんの絵のこと】
彼女の絵が魅力的な理由
翻って、A君と真逆の、趣味で漫画を量産しているAKさんのことも思い出しました。
AKさんは、失礼を承知で言わせてもらいますと、沢山描いているけれど、なかなか上手くならない。
同人誌即売会に出ても、彼女の本は売れたり売れなかったりといった感じだろうと推察します。
私の見た限りでは、3歩離れて見ると、表紙絵は非常にステキです。しかし細部がよく見えるほど近づくと、人間の描き方がアイコン的で、動物の骨格が描けてないなど、粗が目立つので、かなり残念です。
ただ、AKさんの表紙絵はカラーがキレイで、構図がドラマチックなので、(漫画のストーリーも面白いこともあります)たまに気に入った本は買うこともあります。
【何度でも使われる絵と一瞬で消える絵】
A君のママの絵とA君の絵の違い
さて先に述べたA君のママ、漫画家のNさん。
Nさんの絵は、ある特殊な分野ではわりと有名なので、お役所から頼まれて冊子に使われたり、地元の英雄に関するイベントでポスターに使われたりするようです。
Nさんご自身も、その地元の英雄についてはかなり昔から研究しているので、その英雄と御家来衆に関する漫画をよくツイッターなどで発信しています。
Nさんの描いた本の裏表紙に、息子さんのA君が描いた可愛い少女の絵が載っていたことがありました。その絵が可愛いのでその本を買いましたが、上手い絵なのだけど、5分以上見ると飽きる絵です。それに引き換え、Nさんの描いた地元の英雄の絵は、何度見ても、何度使われても見飽きない。
【まとめ】
ストーリーがあると厚みが違うよね、という話。
絵の上手いA君と、彼のママである漫画家Nさんの絵は何が違うのか。
絵の上手くないAKさんの絵は、何故ドラマチックで魅力的に見えるのか。
私は、ナカイケイラ氏から、負傷した飛行機(の擬人化)の絵にまつわる物語を聞いて、凄く腑に落ちるものがありました。
物語がある絵は、絵の巧拙を別にして、ひときわ魅力的に感じられるものなのです。
話を知らなくても、ナカイケイラ氏の絵は美しく説得力がありますが、お話を聞くと一層絵に入り込むことができ、絵に親しみが増します。
AKさんの絵は、デッサン力不足?などが災いして、上手いと思われる絵にはなかなか出会えません。しかしAKさんの絵は、先に漫画のストーリーがあって、その内容を伝えるために描かれているものなので、「ドラマを語ろう」、「カラーでイメージを伝えよう」とする彼女の情念のお陰で、非常に輝くのです。というか見る側に訴えるものがあり、パワーが感じられるのです。
漫画家Nさんの絵と息子さんのA君の絵を上手い下手で比べるなら、A君の方が上手いかな、と思うこともあります。
けれども、A君の絵を見て、5分で見飽きるのは、内容がないからでしょう。
Nさんの絵は、彼女の半生以上をかけて調べつくした英雄の生涯を知った上での絵ですから、何も描かれていないようでも、人物の表情や、甲冑の紐や手袋の柄など、構図やディテールから強力に訴えかける何かがあるのだと思います。
漫画絵とは案外怖いもので、何も知らずに描いているのと、思いを込めて描かれたものは、たとえ線一本でも違ってきます。
漫画…イラスト絵一枚といえども、その背景にあるストーリーがしっかりある物は、ストーリーの厚みの分だけ見る者に伝わるものがあるような気がいたします。
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